地方教育行政法の改悪に反対します

【全教談話】

子どもたちの成長・発達を保障する教育から国や政治家の意向に沿った教育へと転換する地方教育行政法の改悪に反対します

2014年4月11日
全日本教職員組合
書記長 今谷賢二

安倍内閣は、4月4日、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(以下、地方教育行政法)の「改正」案を閣議決定し、国会に提出しました。閣議決定された「改正」案は、戦後教育改革の柱の一つであった、教育委員会制度を根底から覆すことをねらったものであり、断じて容認できないものです。
「改正」案は、教育委員会を形式的には執行機関として残すものの、重要な権限は首長が握るものとなっています。その内容は、第 1 に、教育の大綱的な方針を策定する権限を首長とすること、第2に、大綱的な方針を協議するために首長が主宰する「総合教育会議」を設けること、第3には、教育長と教育委員長を統合し、新「教育長」とすること、その新「教育長」の任期を3年とし、首長が議会の同意を得て任命・罷免できるとすることです。
また、国の是正指示についても「児童、生徒等の生命又は身体に現に被害が生じ、またはまさに被害が生ずる恐れがあると見込まれ、その被害の拡大又は発生を防止するため、緊急の必要があるときは、当該教育委員会に対し」是正の指示ができるとし、これまで以上に国の関与を強める可能性のあるものとなっています。
これらの「改正」は、戦後、日本国憲法の理念にもとづいて地方教育行政の中立性、安定性、継続性を確保するため首長からは独立したものとして確立してきた教育委員会制度を根本的に転換するものです。また、「改正」案では、首長(地方公共団体の長)が「教育基本法第十七条第一項に規定する基本的な方針を参酌し、…総合的な施策の大綱を定めるものとする」としていることも問題です。
文科省の発表では、市区町村の教育振興基本計画の策定率が 59%にとどまっています。これまで地方においては、教育振興基本計画を定めなくともよかったものが、国の計画で縛った上に、策定を押しつけることで、それらを貫徹しようというねらいもあるものと考えざるをえません。
一方、橋下大阪市長の思想調査に対し、教育委員会の反対で教職員への調査をストップさせたことや各地での「はだしのゲン」を図書館から排除せよとの請願に対し、多くの教育委員会が請願を受け入れず、自由閲覧を維持する決定を下したことなど、教育委員会の自主的権限を発揮すれば、一定、子どもと教育を守ることもできるのが現行の制度です。橋下氏が知事時代に「クソ教育委員会」と罵倒したように、安倍首相や橋下市長のように教育を支配したい勢力にとっては邪魔な制度なのです。
このように、今回の「改正」案は、首長による政治支配だけでなく、是正指示による国の介入と合わせて、教育における地方教育行政の自主的権限を奪い、子どもたちの成長発達を保障する教育から国や政治家の意向に沿った教育へと転換するものです。
全教は、こうしたねらいを許さず、「改正」案の廃案に向け全力を挙げるものです。同時に、憲法と子どもの権利条約が生きて輝く教育の実現に向け、父母・国民、教職員のみなさんとともに奮闘する決意です。

以 上

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