【全教談話】尋常でない長時間過重労働を解消するため、ただちに実効ある措置を

【談話】「教育職員の休日の『まとめ取り』に関する文部科学省令」の告示にあたり、「1年単位の変形労働時間制」導入を中止し、コロナ禍における、尋常でない長時間過重労働を解消するため、ただちに実効ある措置をとることを求めます

2020年7月17日

全日本教職員組合

書記長 檀原毅也

 文部科学省は7月17日、「公立の義務教育諸学校の教育職員の給与等に関する特別措置法施行規則」を「文部科学省令」(以下、「省令」)として告示するとともに、「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」(以下、「指針」)を発出し、「教育職員の休日の『まとめ取り』に関する条例・規則案(例)」(以下、「条例・規則案」)を示しました。この時期に発出することによって、「1年単位の変形労働時間制」導入のための「スケジュール表」の通りに、都道府県・政令市9月議会での条例化と来年4月の法施行をすすめようとしています。

 しかし、長期間の休校を経て再開された学校において教職員は、消毒や清掃など感染防止の対策に時間を割きつつ、一人ひとりの子どもに寄り添いながら、大幅な教育課程変更のもとでの授業・教材づくりに、日々格闘しています。これまで経験したことのない事態のもとで、極めて長時間かつ過重な勤務を強いられています。「今はまだ緊張しているからやっていられるが、こんな状態が長く続いたら、身体も心も壊れてしまいそうだ」という声が上がっています。

こうした事態の中で文科省が行うべきは、国会審議において多数の問題点が指摘され、萩生田文科大臣自身、「勤務時間を縮減するものとは考えておらず」と答弁(2019年11月2日・参議院本会議)した「1年単位の変形労働時間制」の導入をいったん中止し、緊急に、教職員の長時間で過重な勤務を解消するための対策を講じることです。全教は、文科省がこのような教職員の深刻な実態を顧みることなく、制度導入をすすめるための文書を発出したことに強く抗議するとともに、緊急に教職員やスタッフ、教室を増やすなどの実効ある措置をとることを強く求めます。

 発出された「省令」等の内容には、重大な問題があります。以下、3点にわたって指摘します。

 第1に「省令」等は、学校現場には適用できない「1年単位の変形労働時間制」を導入しようとしていることです。休日のまとめ取りを目的として掲げていますが、国会審議でも繰り返し指摘されていたように、教職員には長期休業中もさまざまな業務があり、「土曜授業」の振り替えや夏季休暇の取得も考えれば、「休日の『まとめ取り』」をする条件はありません。ましてや、今年のような長期休業の短縮が今後もいつ起こるかわからない中で、制度導入をすすめることは全く無責任です。恒常的な時間外労働があり、また、天候による学校行事の変更や、緊急のうちあわせや子どもの指導がある学校に、勤務日数や総勤務時間を「少なくとも30日前」に定め、しかも途中では変更できない厳格な縛りのある制度は適用できません。

 第2に、制度導入の前提がないにもかかわらず、「導入先にありき」で、「問題が生じたら考えよう」としていることです。「1年単位の変形労働時間制」を「導入」する際の前提条件が「在校等時間の上限遵守」であることは、国会でくり返し確認され、「附帯決議」にも示されています。しかし、「省令」にはそのことが書き込まれていません。また、「指針」は、「在校等時間」の把握にあたって「虚偽の記録等」を「残す、又は残させることがあってはならない」としています。しかし、「在校等時間」の把握に関する全教の緊急調査では、26自治体のうち19の自治体で「休憩取得の有無にかかわらず、勤務時間から休憩時間が一律に除かれている」こと、14の自治体から、「時短ハラスメントを受けた」、「定時になったらタイムカードを押せ」などの「虚偽の記録の押しつけがあった」ことが報告されています。明らかに「『指針』に定められた措置」が講じられていない事態が生じているにもかかわらず、条例化や制度の「導入」をすすめることは、国会審議や決議にも反する行為です。

第3に、国会答弁で示された条例作成の手順について、「省令」は一切触れずに、教職員組合との交渉事項であることすら記載していないことです。国会で「労働者の同意無しに、1日8時間労働の原則を崩すことは許されない」と追及された文科省は、「まず各学校で検討の上、市町村教育委員会と相談し、市町村教育委員会の意向を踏まえた都道府県教育委員会が、…条例案を作成し、…条例に従って、学校の意向を踏まえ、市町村教育委員会が導入する学校や具体の導入の仕方…を決定する」(2019年12月3日、参議院・文教科学委員会・萩生田文科大臣)、「対象者を決めるにあたっては、校長がそれぞれの教師と対話をし、その事情などをよく汲み取る」(2019年11月22日、参議院本会議・萩生田文科大臣)と答弁しました。仮にも条例化や制度導入をすすめるのであれば、これらのことを明確に記載した文書を新たに発出すべきです。

 全教は、「1年単位の変形労働時間制」導入に反対し、上記「省令」等の問題点をあきらかにして、都道府県・政令市議会における条例化と各学校への導入に反対する世論を大きく広げていく決意です。同時に、文科省に対し、今日の教職員の長時間で過重な勤務を一刻も早く解消するために、ただちに実効ある施策を行うことを強く求めるものです。

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