チーム担任制には,条件整備(加配、業務削減)と担任・学校業務へのイメージ転換・共通理解が不可欠

ここにきて急速に枚方市の各学校で管理職を中心に「チーム担任制」導入の動きが広がっています。しかし、学校の厳しい現状の中で本当にチーム担任制が機能するのか、逆に負担や混乱が広がらないのか、現場からの疑問や不安も多く聞かれます。

 今、学校現場で一番何が必要なのか、教員が本当に求めていることはどんなことなのでしょうか?

各地で取り上げられ「期待」「効果」が強調される「チーム担任制」

ここ数年、チーム担任制が各地で取り上げられ、その効果が強調され、期待の声が強まっているとされます。

 富山県の砺波市全市で実施して、教員負担軽減など大きな効果をあげている。

 神戸市では、全市の実施に向け、モデル校で試行し、効果が期待できる  など

枚方でも、先行実施して、効果をあげているとする学校の例をもとに、効果が強調され、期待が寄せられている例が見られます。

 「担任任せの大きな負担ではなく、複数の目で見られ、複数で対応できるので先生の得意不得意をカバーしながら指導できる」など、モデル校、先行実施校の成果を強調して、導入を進めようとする例が多いようです。

市教委が対応責任果たせない「教員不足、業務負担軽減」

管理職中心に「チーム担任制」の「成果・実績」に「期待」?

急速にこのような動きが出てきているのは、近年深刻になる教員不足や、現場の教員の負担の大きさが強まっているうえに、教員確保に対応できず、実効ある働き方改革、業務見直し・削減が取り組めていない市教委が、教員配置が難しくなることに備えて「学校で何ができるか検討しておく」ことを求めている指示などが背景になることは明らかです。

 市教委が、教員確保の責任を果たせない事態になっても、その代替措置や対策も示せないなかで、現場に何とか対応することを求めているため、管理職を中心に、チーム担任制の効果、他市・他地域での成果に「期待」を求めていると言えます。

 「先行事例の結果としての成果」ばかりに目を奪われるのではなく、
    担任・学校業務へのイメージ転換・共通理解が不可欠

各地で成果をあげているとされる、チーム担任制の取り組みには、それぞれの実施に至る背景や、事前の取り組みの積み重ね、保護者や職員との共通理解を広げる取り組みがあり、そのことがとりわけ重要です。「先行事例の結果としての成果」ばかりに目を奪われ、拙速な導入や実施では、それこそ本来の狙いである成果より、負担の増加や、理解不足からの混乱が広がりかねません。

 チーム担任制を先行実施する自治体、学校では、特に小学校では教科担任制の取り組みで実績を積み重ねたうえで移行する例が多く見られます。

 また、本来のチーム担任制の狙いである「担任個人任せでない、複数の目による、複数教員の特性を生かした指導」を試行錯誤しながら取り組んできたことが成果につながっているとされます。

「情報共有」時間の確保に、従来業務の削減、見直しが不可欠

先行実施校で共通して聞かれる声は、「毎日の情報共有、打ち合わせの時間が確実に増える」ことで菅、チーム担任制を機能させるためには避けて通れません。

 それならば、従来の放課後の会議、行事、研修の在り方は大胆に見直し、削減が必要です。研究指定の取り組み、公開授業、研究発表の在り方も根本的に見直すことが必要です。幼保小連携の取り組み、合同音楽会、自校採点など市独自に学校に求める課題も例外ではありません。

 この取り組みなしに、チーム担任制を導入知れば、教員の業務負担の増加、情報共有不十分による混乱は避けられません。

「教員不足」で機能できるのか?加配教員など人員拡充でこそ有効に

教員不足、多忙化・負担軽減対策として、急速に注目されている取り組みですが、忘れてはならないのは、安定して業務に当たれる教員集団が前提です。特に、有効に機能させるためには、小学校では学年に担任プラス1名で指導に当たることで効果を実感できる例も紹介されています。

 多くの自治体、学校で、全段階で専科教員を配置しての教科担任制の積み重ねの上に、全面的な導入につなげているからともいえます。

 この点では、教科担任制がベースの中学校では、比較的以降のハードルが高くないとされており、学年にクラス数の1.5倍の教員配置があるからともいえます。

 一方小学校では、まだ教科担任制がそれほど広まっているとはいえず、他人以外の教員が極めて少ない上に、「チーム」で対応しようにも、慢性的な教員不足で担外だけでなく担任も空き時間に多クラスをカバーしなければならない実態では、指導体制そのものが成り立ちません。

 先行実施校の経験から、教員不足が広がる中でチーム担任制もできなくなっていくのではと、推測する声も聴かれます。

教員も、保護者・子どもも共通理解が不可欠

 チーム担任制で、複数の目で対応できるため「よりきめ細かい対応が可能」と供される場合もあります。しかし、だれもが対応できるということは、担任の対応を「標準化」していくことも含まれます。このことなしに「よりきめ細かい」ことが強調されれば、だれもが、学年など全クラスの子どもに「きめ細かい対応」を求められかねず、教員の対応の限界をはるかにこえる負担になりかねません。

 その点では、従来の担任の先生との関係、対応してもらえるイメージを大きく切り替えるための共通理解の取り組みも不可欠です。

 その点からも、職員、保護者も含めた理解や、方向性の共有こそ重要です。

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